フリーランス等のIT専門家と、デジタル化・DXを進めたい中小企業とをマッチングさせる行政プログラム”中小企業デジタル化応援隊” が2021年となる第二期も引き続き、継続されることが決まりましたね。
ただ本事業、マニュアルが膨大かつ分かりにくいということもあり、全体像や概要を把握しづらい側面があります。
そのため各種公式手引きから内容を抜粋して、中小企業デジタル化応援隊事業の大まかな流れと注意点を下記に解説いたします。

目次
中小企業デジタル化応援隊事業の概要と注意点
中小企業デジタル化応援隊事業とは
中小企業デジタル化応援隊事業とは
全国の中小企業等・小規模事業者のさまざまな経営課題を解決する一助として、 デジタル化・IT活用の専門的なサポートを充実させるため、フリーランスや兼業・副業人材等を含めたIT専門家を 「第Ⅱ期 中小企業デジタル化応援隊」として選定し、その活動を支援する取り組みです。
公式サイト: 【公式】第Ⅱ期 中小企業デジタル化応援隊事業
わかりやすく言い換えると、中小企業の幅広い意味でのデジタル化をサポートするフリーランスや兼業・副業人材を含めたIT専門家が行うコンサルティング系業務に対して、行政が報酬金額の一部を負担します、ということです。
要件を満たす支援提供を行ったIT専門家に対して、最大3,500円/時間(税込)の謝金が事務局から支払われるため、中小企業等は通常の時間単価から上記金額( 最大3,500円/時間(税込) )を差し引いた金額でデジタル化推進のための支援を受けることができます。
※ 中小企業等の実費負担が最低500円/時間(税込)以上あることが謝金支払の要件になっています。
つまり、最低で1時間4,000円以上の報酬金額で依頼を出すことで、そのうちの3,500円分の報酬は行政が負担しますよというプログラムになります。
中小企業デジタル化応援隊事業の注意点
特にセルフマッチングを行う場合など、中小企業の側としては自社が"中小企業の範囲" に当てはまるか注意してください。
参考: 【公式】第Ⅱ期 中小企業デジタル化応援隊事業 "中小企業の範囲"’
デジタル関連コンサルティング等をはじめとした準委任契約に基づく支援が対象です。幅広いデジタル化関連のコンサルティングが対象となります。
ただし、デザイン制作やコンテンツ制作などの、制作費としての利用はできません。
"時給換算が可能かどうか"が準委任契約に該当するかどうかの1つの判断基準となるでしょう。
例: コンサルティング
中小企業デジタル化応援隊事業の実施時期・スケジュール・締め切りなど
IT専門家による本事業への登録受付の期限:2021年9月30日(木) まで ※事務局が本事業のために用意する専用システムへの登録を終了している必要がございます。
中小企業等とIT専門家による本事業の支援計画に関する契約締結の期限:2021年11月30日(火)まで ※専用システムでの中小企業・IT専門家双方による契約締結処理が完了している必要がございます。
IT専門家による支援終了及び支援実施報告の期限:2021年12月17日(金)まで ※中小企業等への支援を終了して、専用システムでの支援実施報告が完了していること必要がございます。
IT専門家による謝金申請の期限:2021年12月24日(金)まで ※専用システムでの謝金申請が完了している必要がございます。
なお、本事業における謝金の申請額と契約締結され実施中の支援にかかる謝金額の合計が謝金予算額を上回る場合は、登録受付および契約締結を締め切ることとなりますので、予めご了承ください。
中小企業デジタル化応援隊で案件マッチング・依頼して実施するまでの流れ
中小企業デジタル化応援隊事業の全体流れ
第Ⅱ期 中小企業デジタル化応援隊 利用についての手引書 中小企業等向け 9ページ "本事業の流れ" から画像引用
中小企業・IT専門家の各アカウント登録
まずは、中小企業およびIT専門家のそれぞれが申請のうえアカウントを作成することが必要となりつす。
要件を満たさない場合、アカウントの作成不可 (中小企業の範囲要件を満たさない場合など)。
申請から、中小企業の場合は数日、IT専門家の場合は1週間程度で承認されるようです(周囲の話より)。
中小企業の場合は従業員数や資本金など、基本的な会社概要を聞かれるのみです。
中小企業アカウント作成・登録時の注意事項
中小企業のアカウント登録に際しては、以下の項目に注意してください。
・担当者の顔写真
担当者の顔写真がデータで必要です。スマートフォン等からでの撮影で問題ないと思われます。 (5MBまで。拡張子はpng/jpg/jpeg/gif/pdfのみ)
この顔写真は、"実際に支援が行われたかどうか"を確認するための照合用として利用されるとのこと。(打ち合わせ風景の写真などをとる?詳細不明)
そのため、会社の代表等ではなく、実際に打ち合わせ等で頻繁に対応を行う担当者の顔写真を提出する必要があります。
なお、この担当者はアカウント作成後にログインして新たに追加することが可能。
・法人番号
法人番号が不明な場合は下記のサイトで確認の上、入力してください。
・登録時のマッチング状況
既に支援を依頼するIT専門家が決まっている場合には、「既にマッチング済」を選択。
IT専門家のアカウント作成・登録時の注意事項
IT専門家の登録に際しては、テキストで経歴・実績を記述する必要がある。webサイトを保有している場合にはwebサイトも登録可能。なるべく多くの実績・情報を登録すると良いと思われます。
また、IT専門家は顔写真、身分証の写真、振込先口座通帳の写真を提出する必要があります。
中小企業による相談案件登録または直接提案依頼によるマッチング
それぞれアカウントを作成したら、次はまず中小企業の側から「相談したい」というアクションが必要です。
これには、"相談案件登録"と"直接提案依頼"の2種類があります。この2種類どちらかの方法で、中小企業とIT専門家のマッチングが行われます。
相談案件登録(事務局マッチング)によるマッチングの場合
相談案件登録とは
相談案件登録とは、中小企業が"中小企業デジタル化応援サイト"の中で案件を登録し、サイト内で募集をかけることをいいます。
具体的には、中小企業が困っていることや要件をサイト内のフォームに記入すると、掲示板形式で募集がなされるという仕組みです。
「ウチは今こういうことで困っているので、どなたか力を貸してください」と広く呼びかけるイメージですね。
IT専門家がこの掲示板の内容を見て、中小企業へサイト内メッセージによってコンタクトをとります。ここで双方が合意すれば、マッチング成立となります。
一定期間が経ってもマッチングしない場合には、事務局が仲介にはいり、案件にマッチするIT専門家を紹介する形式となるようです(事務局マッチング)。
相談案件を登録する流れ
マイページにログイン後、相談案件管理 > 相談案件登録
上記のように相談案件を登録したら、保存するボタンで内容を保存します。
既に依頼するIT専門家が決まっており、直接依頼する場合(マッチング済、セルフマッチングの場合)は下記に設定:
支援計画の提案希望: 希望しない
公開/非公開 : 非公開
まだ"内容が保存されただけ"の状態です。この後、"申請"の手続をすることによって手続完了となります。
保存したまま「審査を申請する」を実行しないと、相談案件が公開されずにIT専門家からの提案が 来ません。必ず「審査を申請する」を実行してください。
相談案件の審査を事務局に申請する
マイページ上メニュー > 相談案件管理 > 相談案件一覧 > ページ内の該当案件で"審査を申請する"ボタンをクリック
相談案件の審査が完了すると、登録済メールアドレスに「相談案件審査完了通知」メールが送信されます。審査が完了した相談案件は、審査ステータスが「審査OK」となり、IT専門家に公開されます。
直接提案依頼(セルフマッチング、外部マッチング済)の場合
直接提案依頼とは
依頼とは、中小企業が特定のIT専門家を名指しで指名し、相談を依頼するというパターンです。
サイト上で気になるIT専門家を見つけ、相談を行うというケースもあるでしょうが、実際には"中小企業デジタル化応援サイト"上ではないオフラインで既にマッチングしているケースにて利用されることが多いでしょう。
具体的には、本制度に登録しているIT専門家が、お付き合いのあるクライアントに本制度を紹介して利用してもらうケースなど。
直接提案依頼を行う方法。特定のIT専門家をメールで招待できる
外部で既にマッチング済の場合、下記のように直接提案依頼を行うことで相談案件登録をスキップできます。メールにより招待されたIT専門家が支援計画を作成するところからスタートできます。
中小企業マイページ > IT専門家への提案依頼管理 > IT専門家への提案依頼登録
外部で既にマッチングしている場合には、相談案件は登録しなくてよい
中小企業向け手引きを読むと、相談案件を登録したうえで
相談案件を作成した後、マッチング済のIT専門家に対して、登録した相談案件IDなどを伝えて頂き、支援計画の提案をお願いする必要があります。
と記載があり、あたかも"直接提案依頼の場合でも相談案件登録が必要" というように読めます。
しかし、同手引のP.34 "7.6. 直接提案依頼の登録" では
既にマッチング済のIT専門家がいて支援の依頼内容をIT専門家が把握している場合、相談案件を登録せず に、そのIT専門家に直接支援計画の提案を依頼することができます。
とあります。さらにFAQでも
相談案件の登録前で既にIT専門家とマッチングしており、支援の依頼内容をIT専門家が把握している場合は、 相談案件を登録せずに、そのIT専門家に直接支援計画の提案を依頼することができます。
FAQ | 中小企業デジタル化応援隊 のNo.31"「相談案件」を登録せずにIT専門家に「支援計画」の提案を 依頼することはできますか" より引用
とありました。この違いは何なのかというと "支援の依頼内容をIT専門家が把握しているかどうか" ということらしいです。
つまり、"外部で既にマッチングはしているけれど、支援の依頼内容をIT専門家が把握していない場合には、システムを利用して概要を伝える用に利用していいよ" ということのようです。
そんなケースあるんでしょうか?金額やスケジュールを含めて伝えたい場合には有用なのかもしれませんが、例外的なケースと思うので紛らわしい書き方はやめてほしいものです。
IT専門家による支援計画の作成・提案
支援計画はサイト上から作成できるようです。この支援計画は、IT専門家が作成する必要があります。
各ステップの支援時間の計画を立てます。注意として、打合せに限らず支援に必要な調査・分析・検討についても支援時間に含まれます。これら準備時間についても支援時間に含むようにしましょう。
支援計画の作成後、事務局への審査を経て承認されることが必要です。
準委任契約を締結
準委任契約は事務局が用意したテンプレートをベースに締結します。
上記契約書をざっと見た場合での注意事項は下記です。
・善管注意義務を負う
善管注意義務とは、"プロ・専門家として求められる一般的な知見や責任にもとづいて注意を払う義務" です(正確ではなく私見)。 一般的な注意よりレベルの高い、民法上での注意義務となります。IT専門家はこの善管注意義務に基づいて業務を遂行する責任を負います。
・再委託は禁止
・書式に基づいての報告が必要
双方、締結手続きはシステム上で行うことができます。 この準委任契約の締結完了をもって、晴れて正式にプログラム(支援実施)のスタートとなります。
支援実施・ステップごとの報告
支援計画で作成した各ステップごとに、テキストベースで報告します。
報告内容は、テキストでの実施内容報告と実施した日時などのスケジュールです。これらの報告もシステム上で行うことができます。
支援完了、報告書類の作成
謝金の申請
支払・振込と謝金について
中小企業が支払・振込を行う金額は"実費負担金額"のみでOK。
謝金はデジタル化応援隊事務局から、IT専門家に直接支払われます。
つまり、中小企業が謝金の立替払いのように一旦全額を負担しなくてもOKということです。
第Ⅱ期 中小企業デジタル化応援隊 利用についての手引書 中小企業等向け 9ページ "本事業の流れ" から画像引用
中小企業デジタル化応援隊サイトへの提言
全体の流れの把握や登録で詰まったポイントがあったり、違いが分からなかったりと非常に分かりづらかったので、ここにUX改善のための提言を残します。(というか行政に対する愚痴です)
そもそもマニュアル(手引き)が網羅的に書かれていて分かりにくい
利用者が"やりたいこと"、"詰まっているポイント"から逆引きできるようにすべき
事業スキーム、登録方法、登録後の操作方法と3つ大きくそれぞれ別の資料に分けるべき。一緒くたにしているので量が多くなり探しづらい。
そもそももっとスリム化できるはず。情報量が多ければ良いというものではない。
私のケースでも実際、マッチング済のクライアントから"分からない"と何度も相談がありました。その度に資料の中から不要部分を削除、抜粋した形でPDFを送付しています。
このような作業はIT専門家にとって大きな負担となりますし、なにより"無駄"です。
マッチング済、直接提案依頼の方法が分かりづらい
外部マッチング済の場合、相談案件を登録する必要があるのかないのか、資料を読み込まないと分からない。
マッチング済で相談案件を登録する、というのは非常にレアケースであろうのに、そちらが先にマニュアルに書かれていて混乱する
外部でマッチングしていて企業の課題を把握していない、というケースはあるのか?仮にあったとしても、そのコミュニケーション(相談作成)をシステム上で行う必要があるとは思えない。
したがって、マッチング済の場合はIT専門家をメールで招待して相談作成スキップして提案を依頼するという一本の運用が好ましいのでは。
マニュアル・手引きがPDFなので検索、ジャンプしづらい
なぜサイト上に直接記述しないのか分からない。(HTML等で出力される形で) 。
たとえば目次がありジャンプ可能とするだけでも上記逆引き風に利用しやすくなるはず
全文検索は一応可能だが、前述のとおり目次ジャンプ等がしづらく検索しやすいとは言えない
ということで、まずこのサイトを"デジタル化"してほしい。
Leave a Reply