先日、FaceBook・Instagram広告の運用コンサルティングの相談を受けました。
「売上も毎月、数百万単位で立っているが、その分広告コストがかかっており、効率性を改善できないか」というご相談。
ご相談いただいたサイトの概要は
• アパレル系ECサイト(服飾)
• カラーミーショップで運用
• 商品単価は5,000円~15,000円で、原価は50~60%
• Google Analytics解析タグも設置しているが、どうも一定期間のみしかデータがとれていない
• 広告運用については外部へ委託しており、解析は任せているが少し不安。データは自身で全てを持っているわけではない
という内容でした。
そこで、「他サイトや業界平均と比べて、効率よく運用できているのか」という点について
まず広告運用の分析を行うことに。
目次
ECサイトの場合、CPAではなくROASを調べる
まず、広告費に対するリターンが適切か?を調べます。
このことによって、広告運用の効率性のチェックができ、改善余地があるかどうかを判断できます。
ここで効率性が適切な範囲内にあれば、問題なく広告運用されているとみて良いでしょう。
効率性チェックの指標としてはROASとCPAの2つがありますが、今回はROASを採用します。
理由は後述しますが、ECサイトであり、成約金額が購入者によってバラつくためです。
自社にとって適切なCPA、ROAS設定できていますか? 販売形態別に見る、目標の定めかた (1/4)|ネット通販情報満載の無料Webマガジン「ECzine(イーシージン)」
ROIとは/「ROAS」「CPA」「ROI」を理解してリスティング広告の正しい効果測定を | スポンサードサーチ再入門 | Web担当者Forum
ROASとは。目安や平均値の範囲について
ROASとは、Return on Advertising Spendの略。
日本語では「投資回収率」と言い換えることができます。
計算式は ROAS = 広告由来売上 / 広告費 × 100。
このROASで何がわかるかというと、「1円あたりの広告費に対して、何円の売上が上がっているか」ということが分かります。
例えば、ROASが500%であった場合、1円の広告費に対して5円の売上がたったということ。
投資回収率という意味で言い直すと、「広告費が5倍の売上となって返ってきた」という意味になります。
CPAとは。有効な指標となるケース
ROASに類似する指標として、CPA(Cost Per Acquisiton)があります。
コンバージョン1件を獲得するのに、どれだけのコストがかかるかという指標。
計算式は CPA = 獲得CV数 / 広告費 × 100。
CPAは獲得したコンバージョンの価値が同じか近いものである場合、有効な指標となります。
これはCVによって金額換算しないアクションや、購入金額がほとんど同じとなる商品を扱っている場合において有効な指標です。
たとえば…
• 問い合わせ
• 資料請求
• 扱う商品が1つのみ
• 価格帯がほとんど同じで、購入点数は1点か同じ数
上記のようなケースにおいて有効な指標です。
私の関わった他のケースでいうと、美容エステサロンLPのリスティング広告運用において、マーケティング担当の方がCPAを重要な指標とされているようでした。
今回はECサイトであり、購入点数が人によって異なること、商品単価も商品によって異なることから
ROASをリターンの適切性の判断指標としました。
ROASの場合には、「広告由来で発生している売上」を抽出する
一般には、ROASの分子は単に「売上」とされていますが
実際には「広告由来売上」に絞り込む必要があります。
なぜならば、ROASで知りたいのは「投資回収率」であり、広告費をかけていないところからの売上を除く必要があるためです。
広告由来によるアクセス比率を推定する
今回、社長ヒアリングからでは詳細を確認できず、社長も細かくは把握できていない様子。
「売上のほとんどは広告由来で発生している」とおっしゃっていたのですが、実際のデータで確認をします。
Google Analyticsの流入元データを確認すると
• Direct: 全体の73.5%): 広告またはキャンペーンからの流入と推定(パラメータ付URL)
• Social:(全体の24%): ※ このSocialの中には広告以外の通常投稿からのクリックも含まれます
• 残り約2.5%がOragnic Search等
このような結果となっていました。
Directについて外部参考記事: 【GoogleAnalytics知恵袋#1】参照元Directの中身を調べる方法
上記の結果から、DirectとSocialを含めた全体の約97.5%が広告経由またはSNS投稿からの流入と判断します。
そのうち、少なくとも73.5%は広告経由と推定。
さらにSocialの半数が広告由来と仮定しました。(ちょっと乱暴な仮定ですが)
上記より、73.5% + 24 / 2 = 85.5%
以上より、総アクセスのうち全体の約85.5%が広告経由で発生したアクセスであると推定しました。
広告由来売上を推定し、ROASを算出
まず、この会社は実店舗はもっておらずECサイト1つのみ。ECサイトの売上だけをみれば良いケースです。
前述の推定より、総アクセスの85.5%が広告経由で発生しているので、売上に85.5%をかけて、広告由来売上と仮定します。
結果、算出されたROASは約300%でした。
ROASは人件費、商品粗利などのビジネス上の要素も関わってくるため、どのくらいが適切なのかは経営目標や業界によって異なりますが、一般的に言って300%は少し苦しい状況となります。
商材そのものの粗利率によって目安ROASも異なるのですが、粗利率20%くらいだとROASが1,000%ほどになり、50%以上だと500%ほどで落ち着く傾向があります。
また上記引用は一般的に広告費が高騰しやすいリスティング広告においてです。
FB・Instagram広告においてはより改善が見込めるものと判断しました。
原因はコンバージョン率の低さにあり!CV率改善がビジネスに与えるインパクト
ECサイトのコンバージョン率平均は1~2%
カラーミーショップのアクセス解析を分析したところ
前月の購買率が0.29%となっていました。
購買率 = コンバージョン率と言い換えられるので、これは一般的な基準からすると極めて低い数値です。
一般に、CV内容によって差はあるもののECサイトのコンバージョン率は1%~2%がおおよその目安として達成可能。低いものでも0.6~0.8%は確保可能かと思います。
あなたのネット通販サイトのコンバージョン率をECサイト業界平均2%超えにする5つの方法 | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ | ネットショップ担当者フォーラム
【初心者向け】CVR(CV率)は平均◯%!? CVRが低い場合の要因、改善方法を解説! | PINTO!
カラーミーショップには「自サイト内からのアクセス」が計測に含まれるので除外。CV率を再計算
しかし、さすがにコンバージョン率が低すぎます。
ここまで低いと広告費が事業を圧迫しそうなものですが、そこまでのビジネス結果にはなっていません。
そこで、カラーミーショップのアクセス解析、およびGoogle Analyticsの流入元を再度チェックします。
すると、両者で訪問者数が大きく乖離していました。
原因を探ってみると、カラーミーショップの流入元に、自社サイトのURLが25%を占めていることが判明。
推測ですが、カラーミーショップでは日付をまたいだタイミングでサイト内を遷移してしまうと、新規ユーザーとしてカウントされてしまうようなのです。
カラーミーショップの購買率とは
購買率(CV率) = アクセス数 / 購入件数(点数、者数ではない)
という計算式で導かれています。
しかし、分子のアクセス数には自サイト経由の25%が含まれているため、アクセス数を75%に割り引いて再計算します。
すると、CV率が約0.35%に修正されました。
微増ではありますが、こちらの0.35%の方が実感値に合っている感覚でした。
修正後の値でも、平均値である1~2%には程遠い数値であることが伺えます。
この「CV率」が最も改善の余地が大きい部分と判断し、クライアントへ回答いたしました。
コンバージョン率を高めることは、広告効率改善においてインパクトが大きい
本ケースにおいて、仮にサイト内CV率が現在の2倍(0.7%程度)になった場合には、ROASも約600%まで改善見込みです。
つまり、コンバージョン率を平均よりやや下並まで改善するだけで、ROASが平均以上に改善するという分析となります。
ECサイトのコンバージョン改善はやることも多く、大規模な改修であればコストもかかります。
• デザイン修正
• スマートフォン最適化
• カゴ落ち対策
• ページ内分析(ヒートマップツール等)
などなど…
しかし、具体的な数値として見るとお分かりのとおり、サイト内改善が非常に大きなビジネス上のインパクトを与えるケースが多いのも事実。
「現状、何も分析やサイト内対策をしていない」というケースは特にそうです。
また、「コンバージョンに近い部分を改善することが、最も効果が出やすい」とも言われています。
広告運用の分析は、広告効果のみから判断しがち。
着地後のサイト改善を含めた、ビジネス全体の観点から分析と判断を行うようにしましょう。
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