私はWeb制作を入口とし、その後のお客様のWebサイト運用・解析・SEO対策まで手掛けています。
このように一気通貫してWebの企画・設計からデザイン~コーディングまで行い
さらに運用・解析・SEOまで行うなど、幅広いWeb業務を行う人のことを
Web業界では「Web屋」と呼びます。
(といっても制作はWebサイトビルダーやNo Codeツールを使ってラクをしないとこなせませんが)
また、私の場合は制作会社とパートナーシップを組んで行う場合には
Webディレクターとしてディレクション部分だけ行うなど、業務範囲や日々のタスクが多岐に渡ります。
周辺業務やコミュニケーション業務も行う必要があり、混沌の中にいるような日々が続いたため
「このぐちゃぐちゃした状況をなんとかせねば…!」
という思いもあり、今回の「マンガでよくわかるエッセンシャル思考」の本を手に取りました。
エッセンシャル思考はずっと昔からおすすめしてますが、漫画版でもいいから一度読んでいただけるといいかなあと。https://t.co/IuvWa6zyzR https://t.co/4uq3OUkchG
— クロネ@趣味ブロガー (@kuroneblog) January 5, 2020
今回私が読んだのは漫画形式だったのですが、内容がスッと入ってきて、かつ要点のみ、綺麗にまとめられている印象を受けました。
以下、「マンガでよくわかるエッセンシャル思考」でなるほど!と思った箇所、要約、そして私の感想を
書評としてお載せしておきます。
Web業界の方のみならず、どんな業界・仕事内容の方でも役に立つ一般的なマインドとなっています。
ぜひお読みください。
目次
優秀な人ほど、成功できない
エッセンシャル思考では、「優秀な人ほど成功しにくい」とあります。
この原因は、優秀なために周囲の期待を早期に獲得でき、そしてその後は周囲の期待に応えようとする傾向があるため、とのこと。
優秀な人は努力家であることが多く、第一段階で成功をしてしまうため、そのことが周りに周知され、信頼を得ることができます。
しかしそのことはある種、諸刃の剣。
信頼をされた結果、周囲からの頼まれごとが増えてしまうのです。
優秀な人は期待に応えようとして、頼まれごとを断らず、すべてやろうとします。
結果、本来やらなくていいこと、やるべきではないことまで手を出してしまい
本質的なタスクに対してパフォーマンスを発揮できないことが多い、とのこと。
エッセンシャル思考でまず大切なのは、「周囲からの期待にこたえたい」という気持ちを押さえ
「減らすこと」。そして、「断ること」。
数を減らし、本質的なタスクのみを自分で選択し取り組むことで、本来のパフォーマンスを発揮できるようになり、ひいては自己肯定感も高まることとなります。
脳の検索エンジンを最適化するためには、厳しい基準が必要丨3つの判断基準と思考法の変え方
では、どのようにして「本当にやること」を見極めればよいのでしょうか。
私たちの脳に正しい選択をしてもらうには、あらかじめ厳しい基準を課しておく必要があるとのこと。
エッセンシャル思考で大切な選択基準は、以下の3つ。
- なぜやるか?
- いつやるか?
- 何をやるのか?
特に個人的には、「なぜやるか?」を明確にしておく必要があると感じています。
なぜなら、この「なぜ」を厳密に定義しておくことで
• やらされ仕事ではなく、自分で「やる」とコミットを決めた仕事
• 自分の価値を発揮できる、やりたいこと、好きなこと、得意なことへ仕事を絞ることができる
という2つのメリットがあると考えるからです。
また見極めのためには、以下のように思考を変えていく必要もあります。
• やらなければならない→やると決める
• 大切なことがたくさんあって選べない→大切なものなど、めったにない
• ぜんぶやりたい→何でもできるが、すべてはやらない
< 感想 >
自分自身の話に置き換えてみても、私は好奇心旺盛なため、何にでも手を出してしまったり
お客様からの依頼や制作パートナーからの頼まれ事を全て引き受けようとしてしまう傾向があります。
結果、各タスク・プロジェクトへのコミットが中途半端なものになってしまうこともありました。
私には特に3つ目の「何でもできるが、すべてはやらない」
という考え方が刺さりました。
具体的な選択基準「90点ルール」
上記のなぜ?いつ?何を?の3つの基準を持っていたとしても
それらはあくまで定性的な指標であり、容易に変化してしまいます。
そこで、より具体的な定量指標である「90点ルール」を導入しましょう。
その仕事の「やりたさ」について、上記の基準をもとに
総合点数が90点以上であるか?を判断するのです。
90点以下であるなら、それはすなわち0点である、とみなす厳しい基準です。
90点ルールは、「絶対にやりたい」か「やらない」かの2択に絞る選択基準です。
< 感想 >
かなり厳しい基準に感じましたが、人生の時間は有限。
特にエッセンシャル思考を読むような人は、今まさに些末なことにまで手を出してしまっている状況で困っているはず。
90点と言う厳しい基準を持ち、本当にやりたいことのみで人生をいっぱいにする方が、充実感が得られるのではないでしょうか。
授かり効果(所有効果)を知り、客観的な価値判断でものごとを手放す
頼まれごとにノー、ということは難しい。そして、一度引き受けてしまったプロジェクトやタスクを手放すことは、もっと難しいことです。
しかし、エッセンシャル思考の本質は減らすこと、断ることにあると前述しました。
人は、自分が所有していると言うだけで、所有しているものにはそのものの本来の価値以上の価値を感じてしまう習性があるとのことです。= 授かり効果
(マグカップの研究。本書参照)
そこで、その授かり効果によって惑わされないために、以下の質問をするようにしましょう。
こういったバイアスは、品物だけでなく、行動についても当てはまります。たとえば、思わぬチャンスが舞い込んできたとき、「このチャンスを逃したらどう感じるか?」と考えるかわりに、「もしもまだこのチャンスが手に入っていなかったら、手に入れるためにどれだけのコストを払うか?」と考えるのです。あるいは長期化している仕事のプロジェクトに対して、「もしまだこのプロジェクトに参加していなかったら、参加するためにどんな犠牲を払うか?」と考えてみましょう。
グレッグ・マキューン,星井博文,サノマリナ. マンガでよくわかる エッセンシャル思考 (Japanese Edition) (Kindle Locations 610-614). Kindle Edition.
< 感想 >
エッセンシャル思考ができない人は、もれなく「捨てられない人」だと思います。
私もものがなかなか捨てられない人間の1人です。仕事やプロジェクトを手放す際だけでなく、自身が所有している物質的なものに対しても、この考え方は有効でしょう。
上手く断る方法・抱えている仕事を手放す方法|代わりの人を探してくる
今まではあくまで自分視点のお話。いざ、実際に仕事を断る際には、発注先である取引相手の事や、会社に所属している方では上司の事なども考えなければなりません。
ただ単純にNOと突っぱねてしまうと、その後の仕事や取引に支障をきたしてしまいます。
「まんがエッセンシャル思考」には、具体的な断り方がいくつか例示されていました。
新規での依頼や、断りやすい仕事については
「その範囲は専門ではないので」
「ちょっとスケジュールが難しいです」
「おそらく予算が合わないかと思います」
とお断りしてしまえばよいでしょう。
しかし、すでに抱えてしまった案件を手放す際や、断りにくい仕事をお断りする際の方法として
最も自分のやり方にフィットすると感じたのが「代わりの人を連れてくる」という方法。
本来どんな人でも、「自分でないとできない」という仕事はほとんどないはず。
過去読んだ本には「仕事の8割は人に任せなさい」という本もありました。(これは管理職での考え方のようです。)
(社内、とは言っていませんよ。会社員の方はこのあたりが難しいですね…)
しかし、仕事を断った際に断られた方が最も嫌なのは「じゃあこれ誰にお願いすればいいの?」という余計な追加アクションが起こることです。
その追加アクションを省略してあげるために、「他の人を連れてくる」ということができれば、頼む側としても文句はないでしょう。
そのために普段から、周囲の人のスキル・適正には網を張っておいたほうがよいでしょう。
フリーランス同士では、こういった横のつながりが大切。自身が受けられない仕事も、誰かとパートナーを組めば引受られる可能性もありますし、いざという時のバックアップにもなります。
あなたがやりたくない仕事は、誰かがやりたい仕事かもしれません。
普段からネットワーキングを怠らないようにしましょう。
見積りは、1.5倍で考える(計画錯誤: プランニング・ファラシー)
1979年にダニエル・カーネマンが提唱した、計画錯誤(プランニング・ファラシー)という言葉があります。作業にかかる時間を短く見積もりすぎる傾向のことです。
(中略)
この状態から脱けだすには、自分が見積もった時間を、つねに1・5倍に増やして締切を設定することが有効です。1・5倍は多すぎると感じるかもしれませんが、実際それだけかかることが多いのですから仕方ありません。
グレッグ・マキューン,星井博文,サノマリナ. マンガでよくわかる エッセンシャル思考 (Japanese Edition) (Kindle Locations 682-684). Kindle Edition.
人間は、自分が過去やったことのあることや、すでにやり慣れているはずのことでも、少なく・短く見積もってしまいがちとのこと。
エッセンシャル思考では、バッファ(余裕)も重要な要素とされます。
本質的なものごとに集中するには、「遊び」と呼ばれる余裕の空間・時間を確保することが重要です。
この遊びがあることで、本来のプロジェクトで何かトラブルが起きたとしても、余裕を持って対処・リカバリを行うことができるでしょう。
< 感想 >
Web制作プロジェクトの検収期間スケジュールは、制作期間と同じ日数を設ける
以前、Web制作者のカンファレンス「CSS Nite」でWebディレクターの方が登壇されたとき
「検収期間は、制作期間と同じ期間設けるべき」
とおっしゃられていました。
Webサイト制作においては、サイトそのものを制作する期間とは別に
「制作したサイトが問題なく動作するか、期待したデザイン・仕様となっているか」
を確かめる「検収期間」というものがあります。
印象としては、多くても1/2程度でしょうか…!
サイト制作のプロジェクトがうまくいっているかどうかの判断基準はたった1つ。
「オンスケジュール」( On Schedule) であるかどうかです。
要件定義→ カンプデザイン→ コーディング→ 検収
一般的には、という流れでWebサイトは制作されるのですが
- テキスト・画像素材がクライアントから出てこない(特にテキストは本当に出が悪い…!)
- 要件に不備、あるいは追加があり調整に時間がかかった
- デザインが確定しない、戻しが多く発生
などの理由で、後工程のコーディングへ仕事が渡る際には、ほとんどのケースで「オンスケジュール」ではありません。
そのため、検収期間を制作のバッファとしての意味をもたせ、十分な日数をもたせることで
プロジェクト工程途中で何か予期せぬことが発生しても、吸収することができるでしょう。
全てのプロジェクト管理者は、「自分が見積もった期間の1.5倍は実際の工程がかかる」
ということを認識したうえで、それをクッションとできる「検収期間」(お仕事によって呼称は異なるでしょうが)
を設置すべきです。
時間だけでなく、料金見積も1.1倍〜1.25倍で
またこの見積錯誤の話、web制作時に行う「料金見積り」 のことにも当てはまるなと感じました。
料金をギリギリのラインで出してしまうと、何か追加の工程が発生してしまったり、制作サイドで当初予期せぬ事態が起こってしまった場合に、クッションがなく費用を吸収することが難しくなります。
もちろん、そのようなことがないように事前に工数等を完璧に見積もることが望ましくはあります。
しかし、そもそも人間の性質として、プランニング・ファラシー(計画錯誤)を誰しも持っているのです。
であれば、料金見積もりの際も多めに見積もっておくことがちょうど良いかもしれません。
ただ料金見積の際に1.5倍とすると、さすがに高額になることも多いので
1.1倍~1.25倍程度で余裕をもたせる、と認識しておく程度がちょうどいいかもしれませんね。
「前に進んでいる」という感覚が人間のモチベーションに対して最も効果的
心理学の研究によると、人間のモチベーションに対してもっとも効果的なのは「前に進んでいる」という感覚だそうです。小さくても前進しているという手応えがあれば、未来の成功を信じられ、そのまま進みつづけようという力になります。心理学者のフレデリック・ハーズバーグは、人の意欲を高める2つの主要因が「達成」と「達成が認められること」であると説きました。
グレッグ・マキューン,星井博文,サノマリナ. マンガでよくわかる エッセンシャル思考 (Japanese Edition) (Kindle Location 722). Kindle Edition.
エッセンシャル思考で、さらにその効果をアップ、そして持続させるためにはモチベーションの維持が不可欠。
大きく進歩をしたいなら、日々何度も繰り返す小さな行為に目を向けるべきと説きます。
そして最小単位として「実用最小限度の進歩」を提唱しています。
「実用最小限度」については、スタートアップでいうMVP(Minimal Viable Product) という概念に由来しています。MVPとは「顧客へ価値を提供するために必要な、実用最小限の機能」のこと。
これを日々の進歩の捉え方に応用して、「重要なことをやり遂げるために、最低限意味のある進歩は何か?」と考えるのです。
少しずつ進み、その地点で評価をしていくために、遠回りな努力や出戻りをすることが少なくなる、筆者は説いています。
< 感想 >
モチベーション維持の習慣として「できたことノート」を
これに関して、毎日できる具体的な方法で思い当たったのが、「できたことノート」でした。
1日5分 「よい習慣」を無理なく身につける できたことノート
できたことノートは、自分の「今日できたこと」に着目して日記をつけていくことで、自分が「前に進んでいる」ということを認識でき、自己肯定感を高めることができるという手法。
私も一時期「できたことノート」をつけており、しかし自身ではなかなか効果を実感できず挫折してしまったのですが
上記のように、モチベーションに対して最も効果的なのは前へ進んでいるという感覚、とされていることから
できたことノートを再度つけてみようかなと企んでいます。
エッセンシャル思考は、自分の人生を「選ぶ」ためのマインド・技術(書評)
エッセンシャル思考で最も大切なのは
減らすこと、そして「ノー」と言って断ることでした。
なぜそのように減らしたり、断ったりしないといけないかというと
あなたが、あなたのための人生を生きるためなのです。
私たちは日々、多くのタスクに翻弄されて過ごします。
しかしそのタスクが、本当に自分自身が選び取って選択したものならば
それはきっと充実感のある毎日にものとなるでしょう。
タスクやプロジェクトを断る選択基準として、「90点ルール」という基準がありました。
厳しい基準で、ノー、と言わなければならないのは、あなたの人生を不要なもので一杯にしてしまわないためです。
私たちは、私たちの人生を、自身の手で選択していく必要があります。
そのために、普段からエッセンシャル思考に基づいた判断を行っていくようにしましょう。
あらかじめ前もって、「やらないことを決めておく」ということで
ビジネス的にも自身のフリーランス価値を高める「専門店戦略」についての記事を書いています。
私自身もWeb屋として広汎な範囲で活動中ですが、それでも「やること / やらないこと」は絞ってお仕事をお受けしています。
業務範囲を狭め、あらかじめ「NO」という範囲を決めておくことも
エッセンシャル思考のうちの1つだと考えています。
ぜひ併せてお読みください。
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